Re Keyboardを作った話

はじめに

この記事はキーボード #2 Advent Calendarの22日目の記事です。

21日目の記事はYoichiro Tanakaさんの「 ウェブブラウザからキーマップを書き換える「WebVIA」を開発中です 」でした。

23日目の記事はbbrfkr(ビビリフクロウ)さんの「自キ初心者が自作ケース沼まで着々と浸かる話」です。

今回はノリと勢いで「Re Keyboard」というものを設計し、頒布した記録です。

設計を始めた昨年12月でしたが、世間の事情と様々さ失敗もあり開発期間が伸びに伸び完成まで半年以上かかりました。

今後自作キーボード設計と頒布を考えている人の参考になることを願い残します。

Re Keyboard とは

Re Keyboardとは左右どちらにも親指で操作可能なロータリーエンコーダー搭載の分割キーボード。

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Re40&Re64

本記事作成時点ではOLEDとバックライトにも対応した40%のRe40,Re42と60%のRe64の三種類。

現在はRe42とRe64を遊舎工房様に委託、Boothで頒布中です。
yushakobo.jp
yushakobo.jp
cyberdeckarsenal.booth.pm

Re64に関してはDaihukuさんの作成されたビルド動画がありますので、よろしければ御覧ください。
www.youtube.com

経緯

まずはじめに、昨年開催された天キーVol.3とC4LAN 2019 WINTERでGZR89CとGZR89Dというマクロパットを頒布しておりました。

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GZR89C&GZR89D

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天キーVol.3(委託)

元々趣味で絵を描いたり、3DCGを弄ったりしており、その中で大型ノブを採用した左手デバイスが欲しいという欲求から設計したものになります。

知識も経験もまったくない中で作成したのもあり、色々と反省点が多く残るものでした。

その中で少し触って頂いた方に左利き用が欲しいとの言われたのと、やはりイベントに参加してマクロパッドではなくキーボードじゃないと駄目だなと感じ、ではこいつをベースに分割キーボードを作成して次回の天キーにリベンジしようと思い立ったのが始まりです。

命名

Reって名前はこのプロジェクトを始める際に名付けました。

ちなみにReはRotaryEncoderの頭文字から取っただけで深い意味はありません。

前作GZR89が振り返ってみると微妙なネーミングでして、GZR89は大型ノブを御座候にみたてて名前を付けたのですが、「ござそうろう」ではなく「ござろう」と間違えていたので恥ずかしい話です。

ただ今回は他との名前被りを考慮していなかったので検索しにくいのがちょっと反省点ですかね…

コンセプト

親指で操作可能な位置にロータリエンコーダを配置

Re Keyboardのキモであり特徴。

左右に1基づつロータリーエンコーダを配置。

余談だが、コンセプト選定時点では親指で弄れる位置としか考えておらず、後々ちょっとした失敗に繋がる。

分割

左右両方でキーボードとして、片側だけだと左手(右手)デバイスとして使用できるようにと分割方式に。

ソケット対応(MX)

コストが上乗せになったとしてもやはりソケット対応して様々なキーを使用したいのと、 飽きて新しいキーボードに移行した際でも資産の流用ができるようにと考え対応。

バックライト対応

自身がオタクであり、やはり光らせたいということで前作GZR89から引き続き使用を検討。
相当数LEDチップ(SK6812MINI)をハンダブリッジをするのは気が引けていたのですが、 足つきLEDチップ(YS-SK6812MINI-E)が遊舎工房様での取り扱いが始まったことを受け採用。

OLED

レイヤー表示やらバックライトの設定やら様々なものを表示できるとのことなので便利にはなると思い採用。

試作

コンセプト選定時点で一番重要なキーレイアウトをとくに決めていなかったので迷走と失敗の歴史です。

とりあえず思いついたものを試作し触ってみるというスクラップアンドビルド方式で作成しました。

そのため何機かお蔵入りしたものが存在します。

Re34(お蔵入り)

プロジェクト開始当初は試作コストを抑える意味も含め左右対称かつ100mm*100mmで収まるようにと考え作成しておりました。

キーボードとして最低限のキー+ロータリエンコーダという構成で30%ほどのRe34というものを設計し、基盤を発注。

まあこれがレイアウトをあまり吟味せずノリと勢いで作ったものですから、 案の定といいますか、大きさの都合上親指のホームボジション直下にロータリエンコーダを配置したので、干渉し非常に使いにくく設計をやり直すことに。

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左部Re34(3D)

Re40

次に作成したのがRe34から6キーほど増えたRe40。

ロータリエンコーダを親指でいい感じに弄れる位置に配置するために、 100mm*100mmという縛りを撤廃。

キーレイアウトを印刷したものに手を置きひたすらロータリーエンコーダの位置を調整。

元々は大型ノブだけ使うことを考えていたのですが、調整の中でノブの大きさに合わせて配置を変更できるよう選択式にしました。

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ロータリーエンコーダを中央部に配置したことによりスペースに余裕ができたので、ProMicroなどの位置も中央へ移動。

大きさの縛りが無くなったので無理をして30%でなくても良いなと思い、左右合わせて6キー増設し40%サイズに変更。

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Re40(試作版)

試作品がいい感じに完成し、ここでエンドゲームかなと思いしばらく使用しました。

しかしBaseキットしか買ってなかったとあるGMKのキーキャップでうまく統一が出来ないという問題に直面し、 ここから色々とキーレイアウトをいじる事に…

Re48(お蔵入り)

迷走してた時期に作成したものその1

オーソリニアのままRe40から左右対称を撤廃し修飾キー増設かつHHKBっぽくにしたもの。

製造したものの気に入らずお蔵入り。

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Re48(試作版)

Re61(お蔵入り)

迷走してた時期に作成したものその2

Re48に数字キー列を増設、オーソリニアHHKBといえばわかりやすいか。

こちらも製造したものの気に入らずお蔵入り。

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左部Re61(3D)

Re64

HHKB配列をベースにしたもの。

元々HHKBとChoco60を使用していたのもあり移行コストが最小限で済むのと、Re48とRe61と作成してきてやはりオリジナルに近いほうが使いやすいと気づき設計。

中央部にロータリーエンコーダとProMicroを配置しているため左右の合体は不可。

ロウスタッガードを採用してるキットだと左右合体し一体型っぽく使用できるのがあるのですが、Choco60使用時にほぼほぼ合体させずに分離したまま使用していた経緯もあり最初から合体を捨てています。

GMKなどのキーキャップのBASEキットのみ購入した場合でも、サイズの問題がないよう最下段のキーレイアウトを設定。

最下段に2Uや2.25U、2.75Uなどキーキャップのセットによっては入ってないこともあるサイズを不使用。

ほぼほぼ収録されているであろう1.25Uと1.5Uと1Uで構成。

左部最下段にキーがあるのはゲームするときにないと困ることが多いので付け足しました。

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Re64(試作版)

上記のは試作品ですが、贅沢にアルミプレートを採用、スイッチにDrop Holy Panda、キーキャップにGMK WHITE-ON-BLACKと山盛りで作成、現在でも使用しております。

最下段中央部のキー配置になれるのに少し時間が掛かりましたが納得できるものを作成できました。

ロータリーエンコーダにはホイールスクロールを配置し、ブラウジングからクリスタまで様々なソフトを使用するのに役立ってくれています。

微修正と頒布

当初はRe64のみの頒布を考えていたのですが、実機をお渡ししたテスターの方からRe40の評判が良かったので、2種頒布することに。

Re40は試作版最下段外側部の切りかけ状から外形形状を変更。

これはチルトが付けにくかったので修正。

準備中にVIAというGUIでキーマップを変更できるものを知り対応。

そして、各所からネジやスペース、梱包材などを仕入れ小分けにしてキット作成。

この過程が自分の中では一番キツかったです。

その後遊舎工房様に委託。

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委託風景

今年はイベントなどで手売りする機会がなく、少しでも頒布した実感を味わいたくBoothでも取り扱いを開始。

需要がわからなかったのであまり数も作成しなかったのもありますが、ファーストロッドは完売。

現在セカンドロットを頒布中です。

改良

Re40のファーストロッドが捌けたので、一旦テスターの方と使用感について話し合いました。

その中でスペースあるし左右にもう1キーづつ欲しいよねとの話になったので改良を決意。

Re42

Re40から最下段に2キーRe42としてリファインしました。
それ以外はRe40と同等です。

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Re42

今後

頒布未定のものが多いですが色々と仕込んでたり作成してたりします。

Re93

Re64からOLEDとバックライトを無くした代わりに1回り大型化したもの。

矢印キーとファンクションキーが欲しいという声があったので作成。

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左部Re93(3D)

現在試作中で問題なければ少数頒布するかも。

ステッカー

自作キーボードキットにはステッカーが同梱されていることが多いので自分も作成を決意。

ロゴだと先駆者さんたちの同じで面白みがないので、Re Keyboradを擬人化したキャラクターのステッカーを作成することにしました。

ステッカー用のイラストをうつぼさんに依頼中です。

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キャラデザイン案

キャラデザイン案がまとまった段階なので、新年度頃にはステッカー作成し頒布までいけるといいなと考えてます。

キーキャップ

発表当初から気長に待っていた東亜重工フォントがついに届いたので、 遊舎工房様のレーザー刻印サービスを利用し作成。

とりあえず試しにと16キー分だけですがいい感じにカッコいいのものに仕上がりました。

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余裕ができたら一式作りたと思います。

G4K

とあるイベントでの頒布用に試作した4キーマクロパッド。

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G4K(試作版)

こんな状況でイベントもないため塩漬け中。

71キー一体型オーソリニアキーボード

とあるものにインスパイアされたTKLサイズの一体型キーボード。

Kicadで設計し始めたところなので完成は当分先。

ケース

今流行のアルミ削り出しケースに手を出したいなぁと思ってるのですが、 コストが掛かりそうなので躊躇しています。

大人しく3Dプリンタ買って、ABSかPLAでケース作るところから始めようかと思案中。

Re38

原点に戻り100mm*100mmで収まるようにしたもの。

ロータリーエンコーダーは上部に設置すればサイズを抑えられるのかなと思い始動。

現在Kicadでの設計途中。

おわりに

個人的にはRe64でEndGameかなと思ってます。

今現在は新規に新しいキーボード作るよりかなキーキャップやらケースなどに手を出してみたい気持ちが強いです。

今後も自作キーボード界隈の片隅で色々と作成していく予定でありますので、よかったら見てやってください。

最後にもし購入された方がこの記事を見ていたらキーボード名のハッシュタグ(#Re40,#Re42,#Re64)をつけて完成品をツイートしていただけると著者が喜びますのでよろしくおねがいします。

この記事はRe64とHHKB Professional Hybrid Type-Sで書きました。