ロータリーエンコーダやトラックボールなどのキースイッチ以外の入力部品について
はじめに
この記事は キーボード #3 Advent Calendar 2021 の1日目の記事です。
キーボード #1 Advent Calendar 2021 の13日目と KEEB_PD Advent Calendar 2021 の15日目 にも記事を書きましたので、よければ御覧ください。
cyberdeckarsenal.hatenablog.com
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キースイッチ以外の入力部品について、自分用のメモを兼ねて簡単な紹介・入手先・採用実績などをまとめた記事となります。
採用実績として紹介したキーボードは参考になればと思い基盤データが公開されているものを中心にピックアップ。
ポインティング・スティックなど他にも紹介できる部品はあるのですが、今回は自分が調べきれてないものありそこら辺は割愛。
前提としてPro Micro・QMK Firmware・KiCadを使用する想定で記述しています。
基本的に自分が知る範囲でのものをまとめましたので、抜け漏れなどがあるかもしれませんがあしからず。
ロータリーエンコーダ
EC11系&EC12系
水平回転入力が特徴のAlps Alpine製部品。
EC11(金属軸)とEC12(絶縁軸)の2分類があり、軸の長さ・クリック数・プッシュスイッチ付きなどで様々な種類が存在します。
互換品としてはBourns社製など。
部品単体では操作しにくいのでノブを取り付けることがほぼ必須なため注意。
今回紹介するなかでは比較的容易に入手・実装出来るため非常に多くのキーボードが採用していたりします。
用途としてはオーディオのボリュームアップ・ダウンやスクロール(PageUp/PageDown)など様々。
How can I use a rotary encoder?
入手先
モノタロウやコアスタッフ オンラインなど。
比較的出回っている部品であるので調達は容易。
ノブの入手先としてはモノタロウや千石電商など。
個人的オススメ
EC11E1834403
金属軸、クリックなし、プッシュスイッチ1.5mmの一品。
滑らかな回し心地と確かに押したという感覚が返ってくる押下幅1.5mmのプッシュスイッチが魅力。
欠点としては単価が高いことと、クリックありより回すのに若干力がいること。
後者はある程度回して馴染ませれば問題なくなるはず。
PEC12R-4222F-S0024
絶縁軸、クリックあり(24/1回転)、プッシュスイッチ0.5mm。
クリック感が返ってくる確かな回し心地と安価が魅力な一品。
欠点としては押下幅0.5mmのプッシュスイッチが若干硬い所。
Chroma Caps Super Knob BLACK (0°) DJ ミキサー用 つまみ
ゴム素材で触り後心地がよく、
操作部の直径12mmと比較的動かしやすい大きさで手に馴染みやすい。
千石電商にて入手可。
岩通アイセック R3310-6-SWA-11 ジョグダイヤルツマミ(黒)
外形が33mmと非常に大きく、
プラ素材で軽く回しやすさが光る一品。
こちらも千石電商にて入手可。
採用実績
自分が設計したRe64_Rev2やASTRA515やSofleなど。
設計メモ
フットプリントはKiCad付属ライブラリを使用すれば問題ないはず。
ロータリーエンコーダ一つにつき空きピンが2つ必要であり、
プッシュスイッチ付きの場合は空きキーマトリクスに配置すると良い。
左右分割型に一つずつ乗せる場合、左右でピンアサインを変更しなけれならないが反転させるだけでもOK。
github.com
ロータリーエンコーダ1つにつき空きキーマトリックスが2つ必要ではあるが、以下の様な実装をすればVIA(Remap)にて割り当て変更が可能となる。
github.com
EVQWGD001
水平回転入力が特徴の部品。
Panasonic製とのことだが公式サイトに一切の情報が無いため不明であり、
データシートも存在していない。
調べた限りSony向けに出荷していた部品らしい。
個人的調査ではあるがSONY VAIO R505に搭載しているジョグダイヤルに似ているのでこの製品に使用していた部品ではないかなと思っている。
国内外で昨年ぐらいから話題になりはじめ、今年に入り採用するキーボードが増え始めた印象。
入手先
Aliexpressのみであったが、先日からDaily Craft Keyboardでも取り扱いが始まった。
ちなみにAliexpress以外で入手できないものかと、国内の部品入手サービスを何社か使ってみたが軒並み無理であった為注意。
採用実績
Rollowなど
設計メモ
出どころ不明で怪しい部品であるためにキットとして採用する際は通電確認などしっかり検品してから同梱すべし。
ピンアサインはこちら
フットプリントは拙作ですが、以下で公開していますのでよければお使いください。
github.com
名称不明(EVQWGD001の長い版?)
正式名称不明。
EVQWGD001の長い版?っぽいがわからず。
多分ではあるがこちらもPanasonic製。
予測であるが、こちらはSONY VAIO GR PCG-GR9/Kに搭載されていた部品だと思われる。
入手先
こちらはAliexpressのみ。
採用実績
不明。
情報求む。
フットプリントも見つからない為、まだ使用したキーボードはないかと思う。
ジョイスティック
RKJXV122400R
レバーを傾けて方向入力をするAlps Alpine製部品。
簡単に言えば箱コンやプロコンのジョイスティックの中身。
tech.alpsalpine.com
そのままだと軸がむき出しな為、カバーの取り付けが必須。
入手先
カバーはAmazonなどで入手可。
採用実績
不明。
情報求む。
RKJXY1000006
こちらもレバーを傾けて方向入力をするAlps Alpine製部品。
PS Vitaで採用されていたジョイスティックらしい。
入手先
秋月電子通商で入手可能。
ただし製造中止品であるため注意。
採用実績
不明。
情報求む。
Joy-Con Stick(形式番号不明)
そのまんまJoy-ConのStick部品。
製造元不明ではあるが、RKJXY1000006と非常に似ているので多分Alps Alpine製。
RKJXY1000006にはなかったプッシュスイッチ付き。
データシートは存在していない。
入手先
純正品はJoy-Conからの入手のみ。
部品単体で販売は見つからず。
互換品がAliexpressなどで流通している。
ちなみに互換品の製造元は不明。
採用実績
設計メモ
フットプリントはmusashi60にて公開されているものがあります。
接続には0.5mmピッチのFPC/FFCコネクタ(5PIN)が必要。
ピンアサインは以下の通り。
固定用の穴が2つある。
M1.7のネジでキツかったのでM1.6のネジがベストかと思われる。
マウスセンサ
PMW3360DM-T2QU
PIXART社製の光学センサ。
一昔前のゲーミングマウスに採用していたりするので聞き覚えがある人もいるかもしれない。
キーボード下部に設置しキーボード自体をマウス化したり、ボールと組み合わせてトラックボールとして使ったりできる。
入手先
Aliexpressのみ。
レンズ(LM19-LSI)付きで入手可能。
採用実績
設計メモ
ブレイクアウトボードにセンサを実装し、SPI通信で制御する。
ブレイクアウトボードはオープンソースで公開されているものがあるのでそちらを使うと良い。
github.com
easyeda.com
通信するにあたり、SS, SCK, MOSI and MISO用のピンを用意しなければならないが、
デフォルトで設定されているので注意が必要。
Pro Micro(ATMega 32U4)ので使用する場合、SSにB0がデフォルトで割り当てられているため、B6などに変更しないといけない。
beta.docs.qmk.fm
PMW3389DM-T3QU
こちらもPIXART社製の光学センサ。
PMW3360DM-T2QUの上位版。
こちらは最新のゲーミングで採用していたりする。
PMW3360に比べ単価が高く、よほどのことが無い限りPMW3360で十分かと思われる。
入手先
こちらもAliexpressのみで、レンズ(LM19-LSI)付きで入手可。
採用実績
不明。
情報求む。
ADNS-9800
Broadcom / Avago社製の光学センサ。
入手先
こちらもAliexpressにてレンズ付きで入手可能。
製造中止品らしいので、採用する際は注意。
採用実績
トラックボール
7mmオプティカルトラックボールモジュール1uタイプ
Pixart PAW3204OA光学式センサーを搭載したトラックボールモジュール。
せきごんさんのトラックボールモジュール用レベル変換基板を使用すれば、OLED用ピンソケットが用意されている基盤に対応可能。
入手先
変換基盤ともに遊舎工房など
採用実績
設計メモ
上記の変換基盤を使うことでI2C通信で制御可能となる。
SCL と SDA用のピンを用意する必要があり、
こちらもデフォルトで決まっているので注意。
beta.docs.qmk.fm
OLEDなどI2C通信を使うものの共用は不可。
本体に固定させるような爪などはなく、そのままだと動かしづらいので、3Dプリンタでケースなど作成したほうがよい。
OLEDを乗せる想定で設計しておけば、後々実装したくなった場合にハード側をあまりいじらなくて済む。
おわりに
現在開発中の新型に色々と搭載したく調べ上げた際に得たものを簡単にまとめてみました。
ほぼほぼ設計者向けの記事となってしまいましたが、自作キーボードにはこういった部品も搭載できると知っていただければ幸いかと思います。
この記事はRe64とHHKB Professional2 Type-Sで書きました。